2回目の任意整理は可能?認められないケースと、その場合の対処法
「過去に任意整理を行って返済をしていたけども返済しきれなくなった」
「任意整理を完済した後にまた借り入れをしてその返済が難しくなった」
このような場合に、再度任意整理をすることを検討する方も多いのですが、2度目の任意整理は許されるのでしょうか。
このページでは、二度目の任意整理が可能かどうか、可能だとしてどのような注意点があるのかを検討します。
1任意整理とはどのようなものか
まず任意整理とはどのようなものかを確認しましょう。
1-1.任意整理とは債権者と交渉して借金の返済義務を軽くするもの
任意整理とは、債務整理の一つの方法で、債権者である貸金業者と交渉をして、借金の返済義務を軽くするものです。
消費者金融・銀行・信販会社などの貸金業者からお金を借りると、元本を分割して返済し、かつその際に利息を一緒に支払い、返済が遅れた場合には遅延損害金を支払う義務があります。
また、期限の利益を喪失してしまうと、分割で良かった元金も一括請求されることになります。
任意整理は、これらの支払いに関する条件を交渉して、返済を楽にするものです。
自己破産や個人再生のように特別な法律に基づくものではなく、当事者が交渉をして、従来の消費貸借契約の支払い義務について和解契約または準消費貸借契約を結ぶものです。
1-2.実務上は元金の分割返済にするのが原則
交渉というと債権者と徹底的に話し合うようにも思えますが、昨今では、いわゆる東京三会基準という基準にのっとった分割返済とすることが通常です。
これは、
● 将来の利息をカットして元金のみの支払いにする
● すでに発生してしまっている遅延損害金もカットする
● 一括請求となっている場合でも分割請求に
● 36回(3年)~60回(5年)の分割弁済にする
という内容になっています。
一般人がこのような内容を求めて貸金業者と交渉をしても、利息や遅延損害金をつけた交渉しかしない場合がありますので、一般的には弁護士・司法書士に依頼をして行います。
ただ、借り入れ期間が短く、貸金業者が利息で収益をあげていない、すでに訴訟をされているような場合には、貸金業者も強硬的な態度に出ることがあり、遅延損害金の一部を認める、利息を一部つけるなどして和解をせざるを得ない場合があります。
2.二度目の任意整理を禁止する規定はなく任意整理は可能
では、二度目の任意整理は可能なのでしょうか。
2-1.二度目でも任意整理自体は可能
まず、任意整理は2度目でも可能です。
任意整理は、債権者と交渉をするもので、相手が承諾している限りは一度目であろうが二度目であろうが行うことができます。
2-2. 2度目以降の自己破産が7年間できない自己破産と混同しない
インターネットの情報をみていると、自己破産手続きについては2度目はできない、といった情報を目にすることがあります。
しかし、自己破産手続きも2度目、3度目でも禁止する法律がありませんので可能ですが、自己破産については前回の自己破産から7年が経過していない場合には、免責不許可事由になるとされているのみです。
つまり、前回の自己破産から7年間は自己破産をすることができない、という情報が混同されている可能性があります。
自己破産については破産法という法律でこのように定められているのですが、任意整理についてはこのような規制はありません。
2-3.任意整理が客観的にできる状況であることは必要
任意整理をすること自体は可能でも、任意整理をすることができる客観的な状態であることは必要です。
任意整理は、元本の分割弁済を、状況に応じて36回(3年)~60回(5年)で行うのが原則となります。
その支払いができないような場合には、任意整理によるのが不適切ということになるのです。
例えば借金が360万円あるとしましょう。
任意整理をすると、36回分割になったときには、毎月10万円が、60回まで延長することができても毎月6万円の支払いをすることが必要となります。
家系の状況から見て、どう考えても4万円程度の返済しかできないような場合に、月6万円の返済という任意整理をすると、毎月の支払いをすることができなくなります。
この場合には、任意整理を利用することができず自己破産や個人再生を利用するのが望ましいといことになります。
3. 2度目の任意整理が必要な場合ってどんな場合?
ところで、2度目の任意整理を必要とする場合というのは、どのような場合をいうのでしょうか。
3-1.ブラックリスト終了後借り入れを行った
任意整理をした直後は、信用情報に任整理をした旨が登録され、新たな借り入れ・クレジットカードの利用をすることができません。
このような状態のことをブラックリストと呼んでいます。
ブラックリストは永遠にそのままというわけではなく、債務整理の手続き別に一定の期間経過後に消滅します。
任意整理の場合は5年~7年が経過すればブラックリストの登録情報は消去されるので、それ以後は新たな借り入れが可能です。
その借り入れが原因で借金返済が困難になった場合には、通常の任意整理と同様に行うことになります。
3-2.任意整理の返済を返せなくなった
最初の任意整理の返済をしている最中に、例えばコロナのせいで残業代が少なくなってしまって返済ができなくなったような場合があります。
この時には残金を基準に2度目の任意整理を行うことで対応可能な場合があります。
例えば、A社に対する50万円が元金の任意整理をした場合で、30万円の支払いをして、残りが20万円となったところで返済がとどこおった場合には、20万円を元金として再度任意整理をすることになります。
3-3.ブラックリスト期間中の借り入れについては要注意
ブラックリスト期間中は基本的には借り入れができません。
しかし、親族や知人・会社から借り入れをしたような場合や、ブラックリストでも貸付をする貸金業者(ここでは正規の貸金業者を指す)から借り入れをした場合には、任意整理が難しい場合があります。
まず、親族や知人・会社から借り入れをしているような場合には、そもそも利息や遅延損害金の支払いをしなくても良いので、任意整理の意味がありません。
元金のみの分割弁済となるのは貸金業者のみで、親族や知人・会社が弁護士と通常の任意整理のような対応をするかどうかは不透明です。
また、ブラックリストでも貸付を行うような会社は、貸金業法の規制は守っても債務整理には非協力的である場合があります。
任意整理を弁護士に依頼をして、貸金業者に任意整理の通知を送ると、貸金業法の規定により本人に督促をすることはできないのですが、訴訟を起こすことまでは否定されていません。
通常の任意整理であれば、交渉がまとまらなければ訴訟を起こされることになるのですが、このような貸金業者は交渉すらすることなく訴訟をしてくることがあります。
ブラックリスト期間中に借り入れが増えてしまったような場合には、債務整理に強い弁護士に相談して、その後の対応を相談するのが良いでしょう。
3-4.闇金融に借り入れをした場合には必ず弁護士に相談する
闇金融から借り入れをしてしまったことが原因で、2度目の任意整理が必要なほどに返済が厳しくなった場合には必ず弁護士に相談をしましょう。
闇金融に対して法律上は借り入れをした元本すら返済をする必要がないとされています。
しかしこれはあくまで法律上の話であり、闇金融は貸金業法の取り立て規制を守らず、出資法・利息制限法の利息上限を超える取り立てをおこないます。
返済しなければ、本人・家族・職場・家族の職場などにかたっぱしから脅迫する内容で督促を行います。
弁護士に依頼をして粘り強い交渉をして、攻撃をしてくるような場合には携帯電話・口座をストップしてもらうような行動が必要となります。
4.まとめ
このページでは2度目の任意整理についてお伝えしてきました。
2度目の任意整理も可能なのですが、自己破産に関する情報と混同してしまうこともあります。
心配であれば、弁護士に直接相談をして質問をしてみましょう。