自己破産したらどうなるの?自己破産の前に知っておくべきことまとめ
「借金の返済が厳しいのだけど自己破産は人生が終わってしまう気がするので嫌です」
債務整理の相談に来た方の多くが、自己破産を避けようとする傾向にあります。
確かに、自己破産をすることによって、いままで通りの生活をするというのは難しい部分はありますが、数百万円単位で返済義務のある借金などの債務の返済義務から免れるという、債務整理の中でも最大のメリットがあるものです。
このページでは自己破産で生活にどのような変化が生じるのか、知っておくべきことをまとめました。
1.自己破産手続きの概要
まず前提として自己破産手続きとはどのようなものか確認しておきましょう。
1-1.自己破産手続きとは債務整理の一つの手段で借金を免除してもらうことができるもの
自己破産とは、債務整理の一つの手段で、借金を免除してもらうことができる唯一の手段です。
借金返済に困った場合に、法律的な手段を使って借金返済を楽にしようというのが債務整理ですが、債務整理と一口にいっても、借金の額と返済可能な金額によって、採るべき手段が異なります。
自己破産は、収入からみて返済が不可能と判断される債務額があるような場合に、今ある資産をお金に換えて債権者に平等に分配して、残った債務については免責してもらう手続きです。
「そんなことをしたら一文無しになってしまうのではないか?」
と思ってしまうかもしれませんが、生活に必要なものについてはそのまま持っておけます(現金も上限99万円まで持っておける)ので、生活にただちに影響するようなことはありません。
1-2.債務整理の他の手続きとの比較
債務整理の他の手続きと比較しておきましょう。
1-2-1.任意整理と自己破産
任意整理は、債権者と交渉をして返済について軽くしてもらうものです。
自己破産は裁判所に申し立てをする点で、書類の作成や添付書類の収集など非常に面倒です。
これに対して債権者と交渉するにすぎず、現在の実務では弁護士に依頼をすればスムーズに進むようになっている任意整理は手続きが非常に楽です。
その分借金減額の幅が一番小さく、将来利息を払わなくてもよい・ついた遅延損害金をカットしてもらえる程度にすぎず、元本は少なくとも分割で支払わなくてはなりません。
分割の期間は3年~5年程度になり、その間は返済をきちんとする必要があるので、自己破産のほうが早く借金返済から逃れることができるといえます。
1-2-2.個人再生と自己破産
個人再生は、裁判所に申し立てをして、借金を減らしてもらって、分割して返済していく手続きです。
裁判所に申し立てをする点では自己破産と変わらないのですが、分割返済をする義務がある点で自己破産とは異なります。
任意整理を利用できない場合には、基本的には自己破産を利用するのですが、住宅ローンで借り入れをして住宅を購入している場合や警備員・宅建士などの資格を利用した仕事に従事している際に利用されます。
というのも、住宅ローンも借金ですので自己破産手続きにおいては免除の対象になるのですが、そうすると持っている住宅が競売されてしまうことになります。
個人再生では、減額されたものを返済する必要がありますが、住宅ローンは手続きに含めないで従来通り支払っていくことができるので、自宅は維持したまま債務整理をすることができます。
また、自己破産をすると、警備員・宅建士の資格については、手続が終わって復権するまで利用できないことになっているのですが、個人再生ならばそのまま仕事もすることができるからです。
2.自己破産手続きをするとどうなる?生活に影響することを確認
自己破産手続きをすると発生する生活への影響を確認しましょう。
2-1.自己破産の依頼をした段階で返済をストップすることができる
自己破産手続き自体は裁判所に申し立てを行うところから始まるのですが、弁護士に依頼をした段階で、返済をストップすることができます。
これは、依頼後に親族や友人など、特定の債務者にのみ返済をする偏頗弁済を防いだり、申立てをするために債務額を確定するために必要とされる措置でもあります。
2-2.督促を受けなくなる
自己破産を検討している方の中には、返済が滞ってしまって、電話や郵送で督促を受けている場合があります。
このような場合に、弁護士や司法書士に依頼をすると、貸金業法21条9号によって貸金業者は正当な理由なく督促ができなくなります。
つまり、督促を止めることが可能となります。
2-3.ブラックリスト
依頼後にデメリットとして影響があるのがブラックリストです。
これは自己破産のみに限らないのですが、自己破産を含む債務整理をすることによって、信用情報機関にその旨が記録され、以後一定期間の間信用情報を利用した行為ができなくなります。
この状態をブラックリストと呼んでいます。
ブラックリストへ登録されると、銀行や消費者金融などの貸金業者からの借り入れをすることができませんし、クレジットカードを新しく作れない・今持っている者に対しても更新の際に利用できなります。
車に乗る人にとっては従来使っているETCカードが利用できなくなったり、スマートフォンの分割購入をすることもできません。
ただ、こちらについては、いずれ返済ができなくなると、延滞によってブラックリストにも入るので、遅かれ早かれこの状態は避けられないといえます。
クレジットカードについてはデビットカードやETCパーソナルカードなどで代替できますし、スマートフォンの契約などについても一括で購入することは可能です。
2-4.手続きに関する負担
自己破産手続きの申し立てをするためには、申立書の作成と添付書類の収集が必要となります。
「専門家に依頼をしたならばあとは任せておけないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、どの銀行に口座があるか、給与はいくら支給されているか、などの情報の提供を受けなければ弁護士も申立書に記載をすることができませんし、通帳のコピーや給与明細などは本人でないと収集できません。
大変な手続きにはなるのですが、弁護士が効率よく申し立てができるように指示をしてくれます。
2-5.官報掲載
自己破産の申し立てをすると、官報という国が発行している紙面に掲載されます。
官報とは、法律の公布や企業の決算公告などを行うために用いられるもので、インターネットでも見られますし、図書館などに置かれたり、政府刊行物を取り扱っているところであれば誰でも購入をすることができます。
自己破産をすると、官報に氏名・住所などが掲載されるので、自己破産の事実が公になってしまうような気がするのですが、ほとんどの人はこの官報を見てはいないので、ここから自己破産の事実が公になってしまうことはあまりありません。
2-6.職業制限
個人再生との比較で少しご紹介したのですが、自己破産手続きを利用すると、一定の資格を利用して従事をしている人が仕事につけなくなります。
これは、自己破産手続きをしている人について、欠格事由としている資格で発生するもので、警備員・宅建士・保険募集人・弁護士や税理士などの士業など、他人の金銭・財産を預かる可能性がある仕事に人に該当します。
公衆衛生の観点から資格制にしている医師・看護師・薬剤師などの職業には該当はありません。
自己破産手続きが終わって「復権」するとこの制限も終わります。
2-7.郵送物が管財人に送られる
少額管財という管財人がつく自己破産手続きになると、申立人宛ての郵送物について一度管財人に送られた上で、中身をチェックされて本人に送られてきます。
これは、郵送物の中に不透明な資金の流れがないかチェックするためのものです。
破産手続きが終了すれば、このような措置もなくなります。
2-8.住居移転の制限
破産手続き中は、申立人は居住する場所についての移転を制限されます。
これは、破産手続きにおける説明義務を果たすための措置であり、実家に戻る・単身赴任をするなどでやむをえない事情がある場合には、裁判所の許可を得る必要があります。
2-9.制限は本人のみで家族に影響はない
このような制限などがあることについて、家族にも及ぶのではないか?と心配になるかもしれません。
しかし、これらはあくまで申立人本人についてのみであって、家族には影響しません。
3.まとめ
このページでは自己破産をしたらどのような生活になるのかについてお伝えしました。
影響はあるものの、全く生活ができなくなるわけではないので、心配なことがあれば弁護士に相談してみましょう。