過払い金の消滅時効は10年?5年?適用条件と改正民法による変更点を解説
「かなり長期間貸金業者からお金を借りていた」
「昔はものすごく高い利息で借りていた」
このような方は、テレビやラジオ・駅の看板・ポスティングなどで目にする「過払い金」というものの存在が気になるのではないでしょうか。
実は過払い金の時効は10年と決まっており、期限をすぎると無効になっているため、請求を検討している方は今すぐにでも専門家に相談しましょう。
このページでは、過払い金請求と時効の関係についてお伝えします。
1.過払い金とは?過払い金請求できる条件
まず、過払い金請求とはどのようなものかを確認しましょう。
過払い金請求とは、払いすぎた利息を返してもらう手続きのことをいいます。
では、なぜ過払い金が発生するのでしょうか?これには2つの法律が関係しています。
1-1.過払い金はグレーゾーン金利によるもの
消費者金融・信販会社などの貸金業者からお金を借りると利息と一緒に返済をする契約上の義務が発生します。
利息は、お金を借りる人の生活を過度に苦しくしないために、法律(利息制限法・出資法)で上限を定めてられています。
法律が2つあるのは、民事上の効力について利息制限法で定め、出資法では高利貸しに対して刑事罰を課しているためです。
この2つの法律の上限の利息は、現在では20%と同じですが、かつての出資法では29.2%~と定められていました。
そのため、利息制限法の上限を超え、出資法の上限を超えない範囲で利息を設定する貸金業者が跡を絶たなかったのです。
この利息のことを「グレーゾーン金利」と呼び、限度以上の利息を支払っていた人には過払い金の返還請求ができるのです。
2006年、グレーゾーン金利について争われた裁判で、最高裁判所は利息制限法を超える利息を貸金業者が受け取る理由はなく無効であって、グレーゾーン金利を支払っていた場合には払いすぎという判断をしました。
1-2.過払い金返還の条件とは
過払い金を請求するための要件は以下のとおりです。
・グレーゾーン金利で支払っていたこと
・現在の残高よりも過払い金のほうが多いこと
・時効にかかっていないこと
また、2010年、出資法の上限金利が20%に改正されたことを受け、払いすぎた利息がある場合には、次のルールによって清算することとなりました。
● 現在残高がある場合には、その残高に充当をする
● 過払い金のほうが残高よりも多い場合や、完済をしている場合には、過払い金の返金を求めることができる
つまり、過払い金として認定される額が20万円、いまその貸金業者に30万円借り入れをしている場合には、差額の10万円が借金の残高になります(この場合は任意整理として残額を分割して返済することになります)。
一方、過払い金として認定される額が50万円ある場合には、差額の20万円を過払い金として請求することができます。
ただし、過払い金として認定される額のみを請求して、残額の支払いを求めることはできないので注意しましょう。
前者のケースで20万円を過払い金として支払ってもらって、元からある残額30万円はそのまま分割で支払ってもらう、ということはできないということです。
2.過払い金請求の時効は10年?5年?
上記に該当する場合は過払い金請求ができます。
過払い金請求件は、不当利得返還請求権という民法703条以下に規定されている権利(債権)に基づき、時効が定められており、最後に取引が終了してから10年で時効が消滅します。
不当利得返還請求権とは、法律上の原因がなく利益を得ている人に対して、損失を被っている人がその返還を請求することができる権利です。
利息を受け取る権利がなかったと評価される以上、貸金業者がその利息を持っている理由がありません。
そのため、この不当利得返還請求権を根拠に貸金業者に対して過払い金請求をすることが可能です。
2-1. 2020年以降は改正民法によって時効が5年に変更
上記で時効は10年とお伝えしましたが、2020年4月の改正民法によって、過払い金請求の権利があると知ってからは5年以内に変更されるので、注意が必要です。
なお、時効については、貸金業者が時効を主張しなければ過払い金の権利主張を認めない、というのが法律上の規定ですが、貸金業者は必ず時効を主張するので、過払い金請求をすることができる余地はないと考えておきましょう。
2-2. 過払い金請求権の時効起算点の考え方
過払い金請求における時効の起算点は、借り入れした日ではなく最終取引日なので、完済をした時期が2020年3月31日より前であれば完済をしてから10年で時効となり、完済をした時期が2020年4月1日以降であれば5年で時効となります。
2-2-1. 1年以上貸金業者と取引がなかった場合
消費者金融や信販会社から借り入れをしていた場合には、途中で完済して、またしばらく経ってから借り入れをするということも珍しくありません。
1年以上取引をしていた期間に間がある場合の時効に関する計算については、取引を2つとしてみることがほとんどで、1つ目の取引で完済をしてから10年を経過している場合には時効にかかります。
例えば、2008年に一度完済をして、2010年から再度借り入れをしたものを2015年に完済したとして、2015年を起点に2020年の段階で過払い金請求をした場合には5年以内なので時効にはかかっていませんが、2008年を起点に考えると12年経過していますので、それ以前に発生していた過払い金については時効と処理されることになります。
2-3.過払い金請求でまもなく時効となりそうなときにはまず内容証明を送る
最後に支払ったのが9年11カ月前で、このままだと時効になってしまう、という場合に何か手はないのでしょうか。
時効にかかりそうな場合には、債権者は時効が完成しないように行動をすることで、時効が完成しなくなる制度があります。
典型例としては、相手に対して民事訴訟を提起することによって、時効の完成が猶予されることになり、判決をもらって確定した段階でそこから時効のカウントが再度はじまることになります(時効の更新)。
ただ、訴訟を起こすのにも、過去の取引の情報を確認したり、相手方の会社の商業登記簿を揃えたり手間がかかります。
そのため、まずは相手に督促をして時効の完成を猶予させ、6ヶ月以内に裁判などの手続きにうつることが可能とされており、この方法が一番現実的で実務でも利用されます。
3.まとめ
このページでは、過払い金の時効と、時効にかからないようにする対応策を中心にお伝えしました。過払い金は債権として時効にかかります。過払い金請求をすることを考えているのであれば早めに弁護士に相談するなど行動を起こす必要があります。