過払い金が戻ってこないケースと戻ってくるケースの違いとは?具体的な5つの事例と共に
過払い金請求を考えている人にとって、一番心配なのは、過払い金が戻ってこないことではないでしょうか。
その心配は、過払い金が発生するメカニズムと、請求しても取り戻せない場合の実例と対応策を知っていれば防ぐことができます。
このページでは過払い金が戻ってこないケース5つと対応策について解説します。
1.過払い金が戻ってくるケースとは
過払い金とは、法律で定められた金利を超えて貸付業者に支払ったお金のことです。
現在は法律の改正によって、過払い金が発生することはなくなりましたが、2010年以前に借金をしていた人は過払い金が発生している可能性があります。
1-1.過払い金が戻ってくるケース①:グレーゾーン金利で借り入れをしていた場合
日本では、利息が高くなりすぎて、契約者の生活を圧迫しないようにするため、利息の上限に関する法律があります。
この2つの法律、現在では上限金利はいずれも20%とされていますが、出資法が2010年6月1日に現在の利息に改正されるまでは、利息制限法よりも高い金利(25%~29.2%(出資法の上限))での貸付が行われていました。
その金利のことをグレーゾーン金利と呼びます。
・利息制限法:上限金利20%
利息の部分の民事上の効力について定める
・出資法:上限金利20%
上限を超える利息をつける者に刑罰を加える
これまでの上限金利をまとめたものが下記で、借り入れ時期によって上限金利が大きく異なっています。
《これまでの上限金利一覧》
時期 | 利息 |
1992年4月まで | 54.75% |
1992年5月~1994年7月 | 40.004% |
1994年8月~2000年5月 | 39.931% |
2000年6月~2010年5月 | 29.2% |
2010年6月~ | 20% |
1-2.グレーゾーン金利での貸付は無効で契約者に返金すべきと最高裁が判断
このグレーゾーン金利について、実際に最高裁まで争われ、最高裁では一連の訴訟で以下のような結論となりました。
● グレーゾーン金利での貸付は民事上も無効
● 現在残高がある場合には、その残高に充当する
● 完済している場合や過払い部分の方が多い場合には契約者に返還すべき
少しわかりづらいのですが、現在50万の残高があって、無効とされる分が20万である場合には、今の残高に充当、つまり残高が30万となります。
現在の残高が30万円で、無効となる部分が50万円ある場合には、20万円を返してください、という主張ができることになります。
このような金銭の請求のことを、過払い金と呼んでおり、貸付業者に対して過払い金請求をすると、多く払いすぎていた利息分を取り戻すことができます。
2. 過払い金が戻ってこない例
では、過払い金の請求について、失敗する例にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは5つのケースを紹介します。
2-1. 過払い金が戻ってこない例①:利息制限法以上で貸付を行っている貸金業者ではなかった
まず一つ目は、過払い金請求をしようとした相手が利息制限法以上の貸し付けを行っていない場合です。
利息制限法以上の貸し付けを行っていない場合には、そもそも無効とされる利息が発生しませんので、過払い金の請求ができません。
銀行のカードローンや、消費者金融・信販会社でも一部の会社は利息制限法を超えない利息で貸付を行っていました。
このような会社に過払い金請求をすると、当然ですが失敗をします。
これを防ぐためには、その会社が利息制限法以上の貸し付けをしているか調べるか、弁護士に相談をして確認するのが良いでしょう。
2-2. 過払い金が戻ってこない例②:出資法の改正以後の借り入れで過払いが発生していない
一般的な消費者金融などから借り入れをしたとして、借入を始めた時期が2010年6月以降、あるいはそれ以前でも利息制限法以内の貸付をしていた時期に借り入れを始めた場合には過払い金請求は失敗します。
利息制限法以内に利息を下げた後に借り入れをした場合には、無効となる利息が存在しませんので、やはり過払い金請求をしても、過払い金がない状態です。
これを防ぐためには、初回の取引がいつであったかの資料をきちんと確認する、資料がない場合には貸金業者に取引の履歴の開示を要求して、初回の取引を確認するのが良いでしょう。
2-3. 過払い金が戻ってこない例③:現在の残高の方が多い
下記で紹介する最高裁判例では、過払い金がある場合には、「まず現在の残高に充当する」としています。
そのため、たとえ20万円の過払い金が発生していたとしても、50万円の借金残高がある場合には、残高が30万円に減るのみです。
50万円を従来通り支払いながら、20万円だけの返還を求めても失敗します。
これを防ぐためには、過去の領収書や取り寄せた取引の履歴から、残高と過払い金のどちらのほうが多いかを確認すると良いでしょう。
2-4.過払い金が戻ってこない例③:貸金とは別にショッピング残高がある
信販会社から借り入れをした場合に問題になるのですが、キャッシングについては完済をした、あるいは残高があっても過払い金の方が多いような場合でも、ショッピング残高があるような場合があります。
この場合に、ショッピング残高を別にして、過払い金の請求をすることはできません。
過払い金がショッピング残高よりも多い場合に、その差額を請求することができますが、ショッピング残高の方がおおければ過払い金請求は失敗します。
さらにこの場合、ショッピングで購入した物品が引き上げられる可能性があるので注意が必要です。
これを避けるためには、過払い金がいくらなのか、ショッピング残高がいくらなのかを、取引履歴をもとに事前に調査するのが良いでしょう。
2-5.過払い金が戻ってこない例④:過払い金が時効にかかってしまった
過去に完済した分を請求しようとして、貸金業者が時効を主張することがあります。
過払い金は法律上、不当利得返還請求権という債権を根拠に請求をすることができます。
この不当利得返還請求権は、民法の時効に関する規定に照らして、一定期間経過すると時効にかかり、請求できなくなります。
時効の期間については2020年4月1日より大きな改正があったのですが、2020年3月31日以前に完済した場合には、完済してから10年で時効となります。
現在の利息に改正された出資法が施行されたのが2010年6月なので、かなりの過払い金が実は時効にかかっています。
時効にかかっている過払い金を請求すると、貸金業者はこれを拒み、裁判をしたとしても貸金業者が時効の完成を主張して裁判は敗訴となっていまいます。
これを防ぐためには、取引の履歴から時効になっているかどうかを確認し、時効にかかりそうであれば早めに内容証明を送る・裁判をするなどして、時効が完成しない手立てをうちます。
途中で完済して、1年を経過してからまた借り入れをしていたようなケースでは、その1年程度の期間が開いていることをもって、前後で取引が二つあるとみなされ、一つ目の取引のみが時効にかかっていて、過払い金の請求ができないということもありますので、併せて注意をしましょう。
3.まとめ
過払い金請求をしようと思っても、残高が多い場合には、過払い金請求に失敗し、さらにはブラックリストという金融事故と扱われる場合もあります。
これを避けるためにも、依頼するかしないかは別として、一度、相談無料の弁護士に相談することをおすすめします。