過払い金請求してみたらどんな流れになるのか?事例を元にご紹介
過払い金を請求してみたいけども、どのように手続きが進むのか、不安な方も多いと思います。
そこで、このページでは過払い金請求をしたらどのような流れになって、どうやって返金を受けることができるのかについてお伝えします。
1.過払い金請求とは
過払い金請求をするための手続きを知るにあたって、過払い金請求とはどのようなものかについて確認しましょう。
過払い金請求とは、貸金業者に返済する利息について、支払いすぎであったと評価されるものを返してもらう手続きのことをいいます。
このような請求ができるのは、利息の上限に関する法律の改正経緯や最高裁判例によります。
1-1.利息の上限に関する法律とグレーゾーン金利
借金をすると金銭消費貸借契約を結ぶことになり、その契約の中で毎月の返済時に利息の支払いをすることになります。
取引について「契約自由の原則」というものがあり、取引内容は自由に決めることができるのが原則です。
しかし、利息を無制限に設定できるとすると、利息が高くなりすぎ、借金返済が困難になる人が多くなるため、法律で利息の上限を定めています。
利息の上限を定める法律には利息制限法と出資法の2つがあります。
利息制限法は取引の効力に関することを規定しており、出資法は上限を超える利息をとるものに刑事罰を与えています。
今ではどちらも上限は20%なのですが、2010年6月1日に現在の利息に改正された出資法が施行されるまでは、出資法の利息のほうが高くなっていました。
貸金業者としては、刑罰を受けるのは困るので出資法の規定は守るのですが、利息制限法の規定は無視をする状態が続いており、利息制限法以上で出資法未満の利息(グレーゾーン金利)で貸付が行われていました。
1-2.グレーゾーン金利での貸付は無効で払い過ぎていた利息が発生
このグレーゾーン金利の取り扱いについて、最高裁判所は無効と判断しました。
その結果、契約者は利息制限法以上で返済をしていた部分については払い過ぎということになり、この部分について返してください、といえることが確認されました。
これが過払い金請求です。
この過払い金請求は、民法上は不当利得返還請求権として発生するもので、貸金業者に対し返還を要求するものになります。
2.過払い金請求の手続きの流れ
では、過払い金請求はどのような手続きで行うのでしょうか。
2-1.貸金業者に返還請求をする
過払い金請求は上述したように、貸金業者に対する民事請求を行うものになります。
何か国やその他の公的な機関に申請をして救済してもらうような性格のものではありません。
そのため、手続は民事上の請求の手続きに沿って行われます。
2-2.過払い金がいくらなのかの調査のために取引履歴を取り寄せる
過払い金の請求については、単に返してください、というだけではなく、いくらの過払い金が発生しているので、いくら返してください、という主張の方法をする必要があります。
そのため、過払い金がいくらあるのかの調査を行う必要があります。
過払い金がいくらあったかは、理屈的には、返済をしたときの元金から、法定の上限の利息を計算して、実際に支払った利息との差額を計算して行います。
そのため、いついくら借り入れをして、いついくらの返済をしたか、という情報が必要になります。
過払い金が発生しえたのは2010年6月1日以前のことになるので、10年以上も前のことを事細かに覚えている人や、その当時のレシートなどの資料を持っている人はほとんどいません。
しかし、貸金業者には取引履歴が保存されており、契約者からの開示要求に対して応じる義務があるとされています。
過払い金請求をするためには、この取引履歴を取り寄せることからはじめます。
取引履歴の取り寄せは、貸金業者のカスタマーサービスや、特別に専用の窓口が設けられていることがありますので、そちらに連絡をして請求をします。
2-3.引き直し計算を行う
次に、取り寄せた取引の履歴をもとに引き直し計算を行います。
貸金業者から取り寄せた取引履歴には、日付と借り入れ・返済の事実のみが記載されています。
この記録は貸金業者と契約していた利息に基づくものなので、差額がいくらになっていたかを計算しなければなりません。
利息の差額を求め、差額を元本に充当して、新しい元本で利息を求めて差額を計算するということを繰り返すことになり、何もなしで行おうとすると非常に面倒なものです。
そこで、インターネットで取得できる、引き直し計算シートを利用します。
引き直し計算シートは、パソコンのエクセルなどの表計算シートの形式で配布されており、必要な計算式が組み込まれていて、いついくら借りて、いくら返したか、日付と金額を入力する欄に入力すれば、過払い金の計算ができるようになっています。
これは弁護士や司法書士などの専門家も使用するものです。
正確に日付と金額を入力して得られた過払い金を貸金業者に請求をします。
2-4.貸金業者と交渉を行う
貸金業者と交渉を行います。
貸金業者との交渉方法については何か規定があるわけではありませんが、通常は書面と電話・FAXを用いて行います。
なお、過払い金は最後の取引から10年で時効にかかるのですが、10年が迫ってきているような場合には、時効にかからないようにするため、民法上の「督促」を行う必要があります。
これによって6ヶ月時効が完成するのが猶予されるので、その間に貸金業者と交渉するか、裁判をすることで時効の完成を止めます。
2-5.裁判を起こす
貸金業者がどうしても過払い金を返さない場合には裁判を起こします。
裁判中には裁判所から和解を提案してくることがあり、そこで納得いく金額の提案が得られると和解で裁判は終わります。
和解案の内容に納得がいかない場合には、判決を取得します。
判決に対しては控訴をすることができますので、控訴された場合には控訴審を争うことになります。
控訴審でも納得いかない場合には上告の手続きがあります。
上告審まで争うか、控訴・上告をしないで2週間経過したときには、判決は確定します。
2-6.判決を得ても従わない場合には強制執行をする
勝訴の判決を得ても相手が応じてこない場合には、強制執行を行います。
貸金業者が保有している口座や不動産・動産などを差し押さえてお金に換えることが可能となっています。
手続としてこのようになっていますが、通常は利用することはありません。
3.過払い金請求の注意点は?
この過払い金請求についての注意点を確認しましょう。
3-1.過払い金の返金基準がある
過払い金はすべての会社が発生している全額を支払ってくるわけではありません。
銀行系や大手の信販会社などであれば、発生していた額をそのまま返金できるところもあります。
しかし、中小の会社や地方の会社ですと、過払い金請求に耐える体力がなく、会社で発生している過払い金の何パーセントで和解をすると決めていることがあります。
たとえば、過払い金の40%の返金を社内で決めている場合には、100万円の過払い金が発生していても40万円しか返金しないということになります。
このときに、100万円を交渉で得たいと思っても、貸金業者では決済をしないことになります。
訴訟をすれば、決済ができるパーセンテージがあがることがありますので、交渉をしてもダメであれば、早々に訴訟をしてみることも検討しましょう。
3-2.専門家ではない人からの過払い金請求には誠実に応じないことも
ここまで自分で過払い金請求をすることを念頭にお伝えしましたが、実際に過払い金請求をしても、誠実に応じない可能性があります。
実際には80%の返還に応じる会社でも、これは弁護士からの請求であればこの金額であって、専門家ではない人からの請求にはもっと値切ってくることが一般的です。弁護士に依頼することも検討しましょう。
4.まとめ
このページでは、過払い金請求をするための流れについてお伝えしました。
流れ全体を見ていただいてもわかるとおり、手続自体は大変面倒なので、弁護士に依頼をすることを検討してみましょう。