過払い金の裁判は長いって本当?流れと判決から入金までの期間まで

過払い金請求をしようと思っている方は、いつ過払い金が手元に入ってくるのか?ということが気になるのではないでしょうか。
過払い金請求をする際に、貸金業者が支払ってこない場合には、最終的には裁判をすることになりますが、この裁判について長いと感じるかもしれません。

このページでは、過払い金請求の流れと、裁判・入金までの期間についてお伝えします。

1.過払い金請求をして入金されるまでの流れとその期間

実際に過払い金の請求手続き全体の流れとそれにかかる期間について解説します。

1-1.過払い金請求をして入金されるまでの流れ①:弁護士に相談をする

過払い金請求は、多くの場合で弁護士に依頼して行われています。
弁護士に依頼をするには、事前に法律相談を行うことになっています。法律相談は弁護士の事務所に連絡をして予約をとった上で、予約の日時に弁護士の事務所を直接訪問して行います。
相談体制を整えているような事務所ならば、その日のうちに相談できることもあります。
法テラスや市区町村の無料の法律相談を利用すると、次の週の指定の日時になることが多いでしょう。

1-2.過払い金請求をして入金されるまでの流れ②:貸金業者に取引の履歴の開示を求める

まず、過払い金請求の計算をするためには、いついくら借り入れをした・返済をした、という情報が必要です。
過払い金請求が発生していたのは2010年6月1日の改正された出資法が施行される以前の話なので、この時期の細かい借り入れ・返済をすべて覚えている方はほとんどおらず、当時の領収書などを保管している可能性もあまり考えられません。

一方、貸金業者は取引の履歴を保存しており、契約者の求めに応じてこれを開示する義務を負っています。
この情報をもとに過払い金の計算を行うので、貸金業者から取り寄せを行います。
弁護士に依頼すれば弁護士が代行してくれますが、自分で請求する場合には自分で貸金業者に連絡して行う必要があります。
会社によって対応の速さが違うのですが、2週間~2ヶ月程度かかります。

1-3.過払い金請求をして入金されるまでの流れ③:引き直し計算を行う

次に、取引履歴をもとに引き直し計算を行います。
取引履歴には、貸金業者との間で契約通りに借り入れ・返済を行った記録が記載されているので、利息制限法の上限で計算し、どれだけの差額があったかの計算を行います。

計算といっても、パソコンの表計算ソフトに、借り入れ・返済をした日時と金額を入力すれば、自動で計算できるものが一般に出回っており、そういったソフトを利用して引き直し計算を行います。
弁護士に依頼すれば、事務所に貸金業者から取引履歴が到着すれば、すぐに計算を行ってくれるでしょう。自分でやる場合でも、数時間あれば可能です。

1-4.過払い金請求をして入金されるまでの流れ④:貸金業者と交渉をする

過払い金請求をする際、突然訴訟を起こしてもよいのですが、ほとんどのケースではまずは貸金業者と交渉をします。
弁護士に依頼した場合には、弁護士が貸金業者に対してFAXで請求を行い、貸金業者がこれに返答することがほとんどです。

貸金業者は会社ごとに請求に対して何%の返還をするか決めています。弁護士はその情報を共有しているので、最初から貸金業者は支払いできる上限の額を示してくることが大半です。
弁護士はこれらの情報を依頼者と共有して、応じるかどうかを決めます。

自分で行う場合には、貸金業者の担当窓口に連絡し書面で督促を行います。
同じように貸金業者から返事がくるので、この金額が貸金業者が内部的に応じることができる金額の上限かどうかを確認する必要があります。

たとえば、過払い金の80%までなら裁判をしなくても応じる会社でも、専門家以外からの請求には40%で交渉を試みることもあるようです。
貸金業者と合意をする際には、いつまでに支払うかも併せて合意をすることになるので、その期日に支払いを受けます。弁護士に依頼をした場合には、一度弁護士が過払い金を受け取り、報酬や経費を差し引いて依頼者に返金を行います。
この清算には経理処理を経ますので1週間くらいかかることがあります。

2. 過払い金請求の裁判は3回程度、4~5カ月かかる

2-1.過払い金裁判の流れ

過払い金についての合意ができない場合には訴訟を起こすことになります。
訴訟は訴状を裁判所に提出して1ヶ月後くらいに第1回期日が始まり、結審するまで1ヶ月ごとに期日が設定されます。

裁判中でも裁判所によって和解交渉が試みられることがあり、これに応じれば指定された期日に金銭の入金をしてもらいます。
特に争点がなければ3回程度で終わるので、4ヶ月~5ヶ月程度で終了します。
争点がある場合には争点によって裁判の回数が延びます。

2-2.過払い金裁判の流れで裁判で勝訴しても支払われない場合

過払い金請求の裁判で勝訴してもなお払ってこない貸金業者に対しては、強制執行を行います。
強制執行は執行裁判所に申し立てを行って、貸金業者の資産を差し押さえて、お金に換えてもらって行います。
対象になる財産にもよりますが、手続自体は2ヶ月~4ヶ月で入金されるでしょう。
ただし、差し押さえる財産がなかった場合にはこの期間が過ぎても入金が得られないので、通常は裁判時までには和解をすることがほとんどです。

3.過払い金裁判の流れで過払い金請求は誰に何を請求するのか確認しよう

過払い金請求を考えている人は、誰に何を請求するのかを確認しておきましょう。

前提として、請求しようとしている過払い金とはどのようなものなのでしょうか。

過払い金請求とは、貸金業者に返済する際に支払う利息について、法律上支払いすぎていたと評価される利息を返してもらう手続きのことです。
契約通り借金を返済しているだけで、このような請求ができるのはどうしてでしょうか。

3-1.利息の上限に関する法律とグレーゾーン金利

貸金業者から借金をすると、利息の返済をする必要があります。貸金業者はこの利息で利益を上げているので、できる限り多くの額の利息を設定したいのが本音です。
だからといって無制限に利息を挙げることを認めると、お金を借りざるをえない人は利息の返済に窮して生活ができなくなってしまいます。
そのため、法律で利息に上限を設けています。

利息の上限を定める法律には、利息制限法と出資法という法律があります。
法律が2つあるのは、利息制限法が取り決めた利息の効力について定めるもので、出資法が高利貸しをする者に刑罰を与えるのが目的であり、目的が違うためです。

この2つの法律における利息の上限ですが、2020年12月現在では、どちらも20%を上限としています。
しかし、2020年6月1日以前は、出資法の利息が現在の利息よりも高い利息でした(直前で29.2%)。
貸金業者は刑事罰を受けては困るので、出資法の規定は守りつつ、利息制限法については当事者が争わない限り問題とならないので、利息制限法の上限を超える利息で貸付を行っていました。
このような金利のことを「グレーゾーン金利」と呼んでいます。

3-2.最高裁はグレーゾーン金利を無効とする判決を下した

グレーゾーン金利の受け取りについて争われた事例において、最高裁判所は、グレーゾーン金利の受け取りは無効で、その部分については契約者に返さなければならないとしました。
その根拠は、グレーゾーン金利については無効なので、貸金業者は受け取る権利がなく、受け取る権利がないにもかかわらず受け取っていたものは民法所定の不当利得として、返還請求の対象になるとしたためです。

3-3.過払い金請求は貸金業者に不当利得の返還を請求する手続き

以上より、過払い金は国や何か特別な機関に対して救済を求めて支払いをうけるようなものではなく、貸金業者に対して民事上の請求をするものです。
そのため、訴訟も国などが相手になるものではなく、貸金業者を相手に民事訴訟を起こすものになります。

3.まとめ

このページでは過払い金請求の概要と流れ、強制執行までの期間についてお伝えしました。
より早く・より多く回収をするためには、ある程度費用がかかっても弁護士に依頼をするのが確実です。