過払い金請求のからくりや弁護士への依頼方法とは

過払い金返還請求で法律事務所に委託した場合のからくりはあるの?

過払い金の返還請求が最高裁判所で認められた2006年以降、その請求件数は急増しましたが、その返還請求を主導したのは弁護士や司法書士などの法律事務所でした。これらの法律事務所は積極的にテレビ、ラジオ、社内釣り、インターネットなどで派手に広告を打って過払い金の返還請求権利を持つ人を募ったのです。

 

ただし、過払い金返還請求には時効があり、同年に貸金業法が改正されて利息制限法を越える融資はできなくなったため、10年以上を経過した現在では消費者金融などでの過払い金返還請求件数は大幅に減少しています。

 

その代わり、現代では、法律事務所があまり扱ってこなかったクレジットカードのキャッシングの過払い金返還請求に中心が移っているようです。

 

このように2006年以降の過払い金返還請求を主導してきた法律事務所にはこの請求においてからくりなどがあるのでしょうか。この点について詳しく見てみるとともに、弁護士などへの過払い金請求の委託方法についても解説します。

 

過払い金専門の法律事務所は貸金業者との取引が多い

過払い金返還請求の専門家集団である法律事務所はすでに10年以上請求代行を行っており、その交渉件数は数千件を越える事務所も珍しくありません。その結果、過払い金回収ノウハウを獲得するとともに、交渉相手となる大手消費者金融や大手クレジットカード会社との関係を構築してきました。

 

そのため、過払い金請求の権利を持つ方とは初期段階である程度どの程度の過払い金を回収できるかを見通すことができるようになっています。

 

大手消費者金融などは普段から過払い金で懇意にしている法律事務所がある

大手消費者金融などは過払い金返還請求が毎日たくさん来ており、件数の多い法律事務所などとは、特に問題がなければ、過払い金の返還率や返還時期についてある程度暗黙の了解によりどれくらいで妥結するかが決まっています。

 

そのような法律事務所には取引履歴の提供や過払い金の計算を優先的に提供するようになっています。そのため、逆に個人で取引履歴や過払い金の計算を要求されても弁護士事務所を通すように言われてしまうのです。

 

過払い金返還請求の環境が変化、弁護士とのからくりも変わりつつある

しかし、大手消費者金融の過払い金請求件数や支払金額は最盛期の2007年~2010年頃に比べると1/10以下に減ってきており、逆に大手消費者金融側が懇意にする法律事務所を選別できるようになっています。

 

また、法律事務所でも得意とする消費者金融が絞られてきている状況となっており、委託される方の借入先が得意とする貸金業者であればよいですが、不得意な業者であれば、貸金業者側から訴訟になることも多くなっています。

 

訴訟になる場合には、委託費用が大きく膨らむこともあるため、法律事務所を選ぶ際にはよく注意する必要があります。

 

弁護士事務所なども過払い金返還請求先を切り替えてきている

また、消費者金融の過払い金返還請求件数が出切ってしまっている状況から、大手の法律事務所などは請求対象をこれまでの消費者金融からクレジットカードのキャッシングに切り替えているケースが目立っています。

 

テレビ、ネットなどの広告を見てもクレジットカードの過払い金に的を絞っているものが増えているのに気がついている方も多いのではないでしょうか。

 

弁護士事務所の懐は細っている

このような過払い金返還請求における環境変化はこれまで過払い金に依存してきた法律事務所の経営事情にも大きな影響を与えています。

 

今年の6月後半には過払い金のテレビCMを派手に打っていた大手法律事務所の「東京ミネルヴァ法律事務所」が破産しました。この法律事務所は、かつて大手消費者金融の「武富士」の店長などをしていた人たちが開設している広告代理店にCMを依頼していたようです。

 

同時に当初は武富士の顧客データが持ち出された可能性があり、顧客紹介も受けていたため、顧客が少なくなってもCMを止められず、過払い金を回収した資金に手を出して自転車操業になっていたようです。

 

この広告代理店にCMを依頼していた法律事務所は「東京ミネルヴァ」にとどまらず、

かなりの数の事務所が依頼していたようです。

 

いずれにしても多くの過払い金返還請求に依存していた法律事務所の経営状況は苦しくなっているのは間違いないでしょう。

 

東京ミネルヴァでわかった過払い金の現実

東京ミネルヴァでは、過払い金の返還請求の委託をした人が1万人とも2万人とも言われていますが、それから推定すると返還額の平均は15~30万円程度になります。

 

ホームページなどでは200万円とか300万円という方が紹介されていますが、時効も増えていることから、実際に返還される金額は10万円程度になっているケースが多いと思われます。

 

また、最近増えているクレジットカードのキャッシングの場合には一括返済も多く、時効にかかったり、金額も小さかったりするため、実際の返還額はさらに少ない可能性も高いでしょう。

 

弁護士への委託方法は借入先のからくりの残っているところを確認

現在では、法律事務所と大手消費者金融などとの関係は以前と大きく変わってきています。すなわち、以前は大手消費者金融では過払い金返還のために資金繰りが苦しく、なるべく返還率を下げ、実際の過払い金の支払いも半年後は当たり前で、1年後や1年半後などもよくありました。

 

そのために、早く一定の返還率でまとめてくれる法律事務所はむしろありがたい存在になっていたと言えます。しかし、過払い金をめぐる環境は変わってきています。

 

環境変化に応じた弁護士事務所への委託先の検討が必要

現在では過払い金返還請求件数そのものが減少して、大手消費者金融などは資金に余裕ができており、交渉でもより強気で臨むことも多くなっています。

 

したがって、返還率は下がることはあっても上がることはないと思われます。より低い返還率で妥結してくれる法律事務所とのつながりが強くなります。逆に返還率を下げてくれた場合には返還時期を早める等も出てきます。

 

逆に関係性の薄い交渉に強気一辺倒の法律事務所とはなかなか妥結することは少なくなり、訴訟に持ち込むことも多くなる可能性があります。そのために、返還までの期間も長くなってしまいます。

 

弁護士事務所に過払い金返還請求を委託する場合の留意点

以上のような過払い金返還における環境変化によって、これまでの法律事務所と消費者金融とのからくりにも変化が訪れています。そのため、貸金業者との関係性を強めるところと逆に関係性も資金的にも苦しくなっている法律事務所に分化してきていると言えます。

 

したがって、過払い金返還請求を弁護士などの法律事務所に委託する場合にも留意すべきことが増えてきており、それをまとめてみましょう。

 

法律事務所ごとに得意とする貸金業者を見極める

法律事務所で得意とする貸金業者が違っており、実際の実績を調べて、自分が借りていた借入先が入っているかをよく確認しておく必要があります。

 

利用者の声は数少ない成功例だけを掲載していますが、業者の実績件数はごまかせません。

 

法律事務所が問題を抱えていないか弁護士会などに問い合わせる

最近では大手法律事務所でも破産するケースがあり、行き詰まる原因は過払い金の流用が多いです。

 

そのために、法律事務所の属する弁護士会などへの苦情や懲戒請求などの状況を問い合わせるとよいでしょう。問題のある法律事務所は必ず懲戒請求などが寄せられている可能性が高いです。

 

いくつかの法律事務所から費用見積もりをとる

法律事務所に、返還金額の見通し、費用見積もりをいくつかとって比較してみるとよいでしょう。いくら費用が安くても返還金額の見込み(返還率)が低ければ、手取り返還金額は少なくなってしまいます。

 

司法書士集団では延滞による訴訟は避ける

過払い金返還請求の費用が高くなる要因には訴訟費用があります。とくに司法書士事務所の場合には自身では訴訟ができないため、別の弁護士事務所に委託することになるため、費用はかなり高くなる可能性があります。

 

とくに何度も延滞があった場合には、貸金業者側から訴訟に持ち込まれる可能性があるため、最初から弁護士事務所に委託した方がよいでしょう。

 

まとめ

過払い金返還請求については、これまで弁護士集団などの法律事務所が中心になっておこなわれてきました。それは、過払い金返還請求では過払い金の計算や交渉などにおいて個人で行うには困難な作業があったからです。

 

弁護士などの法律家集団では、消費者金融などと数多くの返還交渉を行ってきました。その結果、互いに関係性を強めて過払い金の返還率、返還時期で暗黙の一定の取り決めをしたり、取引履歴や過払い金計算を提供したりするなどの関係、すなわち過払い金交渉のからくりが出来上がっていたのです。

 

しかし、過払い金返還請求の最高裁判所の判決が出てから、10年以上経過したことですでに高額の過払い金の発生する方の数は1/10以下に激減し、そのからくりも大手消費者金融などを中心に見直しも行われています。

 

そのため、過払い金返還請求を弁護士事務所などに委託する際には、借入先に対して多くの実績があるか、トラブルが起きていないかなどを確認の上、委託する必要が高まっています。