なぜ過払い金は大手クレジットカードでも多いのか?

大手クレジットカード会社でも過払い金が発生?

最近では大手消費者金融での過払い金返還請求は対象者が出切った影響もあって少なくなっています。そのため、最近の法律事務所などの広告ではクレジットカードでの過払い金返還請求を勧誘するものが増えているようです。

 

一般にはクレジットカードでは利息ではなく、手数料なので過払い金は発生しないと思っている方も多いのですが、クレジットカードでも過払い金が発生する可能性は高いのです。

 

それは、クレジットカードにはキャッシング機能というものがあるからです。クレジットカードのショッピングの支払いはたしかに手数料で過払い金の対象にはなりませんが、キャッシングはあくまでも借入にあたり、利息制限法の法低金利を越えた利息で借りていれば過払い金の対象になります。

 

クレジットカードのキャッシングはかつてドル箱だった

クレジットカードのキャッシング枠は、2006年の貸金業法の改正以前には利益の厳選となっていました。たいていは金利が利息制限法の法定金利を越えた29.2%で貸付をおこなっており、ショッピングの低い手数料をカバーしてくれていたのです。

 

そのため、カード会社ではほとんどカードローンを発行しているところはなく、クレジットカードのキャッシング枠で十分利益がでていました。

 

クレジットカードのショッピングの利益率の低さをカバーしたキャッシング

かつてのクレジットカードにおけるショッピングは、利用者手数料の発生しない一括払いが多く、しかも加盟店手数料も低かったことから、延滞率は低かったものの、利益はほとんど出ない構造になっていました。

 

その利益性の低さをカバーしたのがキャッシングでした。キャッシングの金利は29.2%とショッピングのリボ払い手数料の2倍近くの収益が期待できたため、多少延滞率が高くても十分に利益が出ていたのです。

 

そのため、銀行系・信販系のクレジットカード会社はキャッシング枠をカードそのものの限度額まで使えるようにして、積極的に利用を促進させる政策をとっていました。

 

2006年を境にキャッシングの考え方は変わった

しかし、2006年に利息制限法を越えた貸付は実質違法と最高裁判所で判決が出て、貸金業法が改正になります。

 

貸金業法の上限金利が利息制限法の法定金利に改正になると、クレジットカード会社はキャッシングの金利を法定利息内に引き下げなければならなくなったのです。しかも、総量規制が導入され、キャッシング枠は年収の1/3以下に制限されました。

 

そのため、クレジットカードではキャッシングの金利はショッピングの手数料と差がなくなり、延滞率も高いため、儲かる商品ではなくなったのです。

 

しかも、かつてはキャッシング枠は全体の利用限度額まで使えましたが、現在では貸金業法の総量規制が適用されるため、キャッシング枠の上限は小さく制限せざるを得なくなっているのです。

 

そのため現代では、クレジットカード会社はクレジットカードとは別に利用限度額の大きいカードローン(キャッシングカード)を発行して、大きな限度額を持ったカードが提供されるようになっているのです。

 

古くからあるクレジットカード会社は過払い金に苦しんだ

また、2006年に最高裁判所で、利息制限法の法定金利を越えた利息は過払い金として返還請求できることが確定しました。

 

そのため、古くから利益率向上のために積極的にキャッシング枠を提供していた大手クレジットカード会社にも過払い金返還請求が殺到し、利益確保に苦しむことになったのです。

 

なぜ、大手クレジットカード会社では過払い金請求が多いのか?

新興のネット系、流通系などのクレジットカード会社は、スタートが遅かったために貸金業法改正前後でのカード発行が多くなっています。そのため、最初から利息制限法の法定金利以内でのキャッシングになっていたため、過払い金返還請求はほとんどないのです。

 

過払い金返還請求によるコストがないために、より多くの資金を利用者へのポイント還元に向けることが可能になり、現在では流通系・ネット系のクレジットカードが急増しています。さらに、交通系の電子マネーやスマホ決済などのキャッシュレス化が進んでいるのです。

 

しかし、銀行系・信販系のクレジットカード会社はそれ以前から積極的に法定金利を上回るキャッシング枠を提供していたため、過払い金返還請求の波が押し寄せたため、経営が苦しくなりました。そのため、ほとんどの従来からの信販系クレジットカード会社は銀行系との合併などに進まざるを得ませんでした。

 

過払い金は2006年以前にクレジットカードでキャッシングを使った人が対象

過払い金の対象となるクレジットカードのキャッシングは、基本的には2006年以前に利用していたものになります。それ以前のクレジットカードのキャッシングの貸付利率は年利29.2%のものが多かったからです(貸金業法改正以後は法律で利息制限法の方低金利よりも高く貸せなくなったため)。

 

ただし、クレジットカードのキャッシングの利用は、一括払いでの返済も多くありました。そのため、何度も一括払いでキャッシングを利用していた場合には、現在では対象にならない場合も多くあります。

 

短期利用で完済している場合は時効になっている可能性に注意

過払い金返還請求には10年という時効があります。すなわち、一括返済で完済してしまうと、その完済時点から10年を経過していると過払い金返還請求の権利は消滅してしまうのです。

 

したがって、すでに貸金業法の改正から10年を越えており、それ以前に利息制限法の法定金利を金利を上回る金利で借りていても、完済から10年以上経過したものは現在では返還請求ができません。

 

大手クレジットカード会社のキャッシングで借りた記憶があっても、いつ完済したかという記憶はなかなか残っていない場合が多いと言えます。そのような場合には、クレジットカード会社から取引履歴を取り寄せて、法律事務所などの専門家に相談するのがよいでしょう。

 

最近の法律事務所の広告でクレジットカードの過払い金が多い理由

2006年以降、過払い金返還請求が急増しましたが、その多くは消費者金融からの借入に伴うものがかなり多かったと言えます。

 

少額で一括返済が多く、発生する過払い金の金額もカードローンなどに比べると小さいために、法律事務所も多額の過払い金が発生するカードローンを対象として広告を積極的に行なっていたのです。

 

しかし、貸金業法の改正から10年以上経過して大手消費者金融などの過払い金返還請求対象はかなり少なくなり、まだ手付かずのクレジットカードでの過払い金に注目がいくようになっています。

 

クレジットカードのキャッシングでも、一括払いではなくリボルビング払いで継続して利用している人はいます。

 

継続利用して完済をしていなければ、2006年以前のキャッシングで生じた高い利息は過払い金返還請求の対象になります。そのため、法律事務所では大手クレジットカード会社をターゲットにして過払い金の広告を行なっているのです。

 

 

過払い金返還請求では大手クレジットカード会社が多いのまとめ

2006年以前からクレジットカードのキャッシングを積極的に展開していた大手カード会社では過払い金返還請求の権利が残っている場合があり、今も多くの請求が行われています。

 

過払い金には10年という時効があり、一括払いで返済した場合には、現在では請求権は消滅しています。しかし、リボ払いで昔から利用している場合には、過払い金返還請求の権利が残っている場合があり、過去にはあまり行われていないだけに、法律事務所もそれらを対象とした広告をするようになっています。