債務整理によるデメリット~配偶者への影響まとめ~
借金の返済ができなくなって債務整理を考えている方の心配事として、配偶者(夫・妻)にデメリットが及ばないか、ということが挙げられます。
共同生活を送る夫婦ですので、関係も密接であるため、事実上のデメリットが0とはいえないのですが、心配しているような影響がないこと・事実上の影響としてどのような影響が生じるか、を知っておくことは重要です。
このページでは、債務整理をすることによって配偶者である夫や妻に生じるデメリットについてお伝えします。
1.債務整理によって本人に及ぼすデメリット
そもそも債務整理をすることによって本人にどのようなデメリットが発生するか確認をしておきましょう。
1-1.ブラックリスト
債務整理をするとブラックリストに載るといわれています。
実際にはブラックリストというものはなく、信用情報に債務整理をしたことが登録されて、各種審査に影響が及ぶことになる、という状態のことを指します。
実生活では次のような影響が及びます。
- 銀行・消費者金融・信販会社などの貸金業者からの借り入れができなくなる
- 新しいクレジットカードを作る・クレジットカードの更新をすることができなくなる
- 携帯・スマートフォンの新規機種の分割払いでの購入ができなくなる
- ETCカードの申し込み・更新ができなくなる
これだけ見ると生活ができなくなってしまうのでは?と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、お金を借りることはできなくなっても、VISAデビット・スマートフォンの一括購入・ETCパーソナルカードなどの代替手段があり、不便にはなるものの生活できなくなるレベルではありません。
この状態は債務整理の方法と貸金業者の処理方法にもよりますが、最長で10年で削除されます。
1-2.官報公告
自己破産・個人再生をすると官報という国が発行しているものに、自己破産・個人再生の事実が掲載されます。
官報というのは国が法律を公布するためであったり、会社が会社法に規定されている決算公告を行うために利用されたりするもので、手続を公にする必要があるものについて行われます。
官報は政府刊行物を取り扱っている書店で購入したり、図書館・インターネットで閲覧をすることが可能で、誰でも見られるものです。
自己破産・個人再生においては、手続が進行していることをしらない債権者に伝える目的で官報公告がされます。
ただ、実際には日常的に官報を見ている人は稀で、ここから自己破産・個人再生をしたことが漏れ出るおそれはほぼありません。
1-3.自己破産手続き中の各種制限
債務整理の中でも、借金を免除してくれることになる自己破産手続きについては、手続中に下記のような制限があります。
- 宅建士・警備員・保険募集人などの一定の職業につけない
- 住居の移転を制限される
- 郵送物が一度管財人に送られ開封して中を確認してからまとめて本人に送られる
これらの制限は手続きが終われば終了します。
2.債務整理のデメリットが配偶者(夫・妻)には及ばない
上記のようなデメリットですが、配偶者(夫・妻)には及ばず、あくまで本人のみに及びます。
各項目について詳しくみてみましょう。
2-1.ブラックリストは本人のみ
まず、ブラックリストとして、信用情報に事故情報が登録されるのは本人のみで、夫・妻などの配偶者が登録されるということはありません。
ですので、例えば妻が債務整理をしてブラックリストになったとしても、夫はそのまま借り入れ・クレジットカードの利用をすることができます。
2-2.官報公告がされるのも本人のみ
自己破産・個人再生を利用して官報公告されるのは本人のみで、配偶者の氏名などが記載されるわけではありません。
2-3.自己破産手続きの制限も本人のみ
自己破産手続きで制限を受けるのは本人のみです。
ですので、配偶者が仕事につけなくなる、配偶者宛ての郵送物が管財人に転送され中を確認されて送られてくる、配偶者が引っ越しできなくなる、ということはありません。
3.事実上の影響が及ぶケースを確認
以上は法律や制度として債務整理の影響が配偶者に及ぶかということだったのですが、夫婦の一方にこのような制限がかかる以上、事実上の影響が避けられないケースがあります。
具体例を見てみましょう。
3-1.家族カードを配偶者が使っている場合
例えば、妻が家族カードを使って日常生活に必要な買い物などを行っている場合に、夫が債務整理をするとどうなるでしょうか。
家族カードは、使っているのは妻でも、与信の審査は夫について行われることになります。
そのため、夫が債務整理をしてブラックリストであると、使っている妻が債務整理をしていなくても家族カードは使えなくなります。
3-2.住宅ローンに申し込みができない可能性が高い
例えば、夫婦で住宅ローンを申し込んで住宅を手に入れたい、と思ったときに、夫婦の名前で住宅ローンに申し込む、一方の名義で申込をして他方が連帯保証人になる、などの方法があります。
ブラックリストは住宅ローンにも及びますので、本人単独名義で申し込むことができないのはもちろん、共同名義での申し込みもできませんし、連帯保証人になることもできません。
3-3.闇金融からの借り入れについては法律を無視してくる可能性が高い
債務整理については通常の貸金業者を想定していますが、闇金融から借り入れをしている場合には配偶者への影響が避けられないでしょう。
闇金融から借り入れをする際には、配偶者の携帯や職場に関する情報を求められます。
貸金業法21条では配偶者などの家族に返済を迫る行為を禁止していますが、闇金融はもともと法律を遵守する気がないので、お構いなしに知っている連絡先に攻撃を開始します。
もちろん配偶者の電話番号や勤務先にもお構いなく攻撃をしきますので、必ず弁護士に相談をして対応をしてもらうようにする必要があります。
3-4.自己破産・個人再生の申し立て
自己破産・個人再生の申し立てにあたって、申し立て要件である「支払不能」を裏付ける証拠として、家計の状況と家計の状況を裏付ける資料の提出が求められます。
たとえば、給与については給与明細が、家賃については賃貸借契約書や銀行の引き落としを確認するための銀行通帳のコピーがこれにあたります。
夫婦で共同して生活をしていると、家計が一緒になっていることが多く、裁判所によっては申し立てをする人の配偶者の給与明細についてまで提出を要求してくることがあります。
裁判所に給与明細を提出する、というだけで給与が差し押さえられるようなことはありません。
4.配偶者に債務整理のデメリットが影響しなくてもバレてしまわないか
配偶者に債務整理のデメリットが及ばないか気にする方の多くが、配偶者に借金をしていることがバレないかが気になるのではないでしょうか。
基本的には、依頼をした弁護士は、たとえ家族からの問い合わせに対しても、家族に内緒にしておいて欲しいことを伝えておけば、内緒にしてくれます。
弁護士や管財人からの郵送物や、ブラックリストで事実上の影響が及んだなどで、バレてしまう可能性はなくはないですが、基本的には配偶者に内緒で債務整理は可能といえます。
ただ、任意整理や個人再生のように返済をすることが前提の手続きは、返済をきちんと継続することが不可欠です。
苦しいときには配偶者に助けてもらえると楽になりますので、正直に話すことも検討してみてください。
5.まとめ
このページでは、債務整理のデメリットが配偶者に及ばないかについてお伝えしました。
基本的には債務整理のデメリットは配偶者に及ばないのですが、特定のケースでは事実上の影響が及ぶこともあります。
弁護士に相談をする際に徹底的に疑問点を解消するようにしておくようにして、安心して債務整理をするようにしましょう。