奨学金で過払い金が免除できる?できない?債務整理との関係まで解説
借金の返済をしている人の中には、過払い金というものがあってお金が返ってくる、という情報を知って「奨学金もある意味借金なので、過払い金があって、借金が免除されるものではないのだろうか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
先に結論から申し上げますと、奨学金の借り入れについては過払い金は発生せず、免除もされません。
このページでは、奨学金が過払い金で免除されない理由と、返済が厳しい場合の対処方法についてお伝えします。
1.なぜ奨学金は過払い金で免除されないか
どうして奨学金には過払い金が発生して免除されないのでしょうか。過払い金の仕組みと併せてその理由を確認しましょう。
1-1.過払い金請求とは
そもそも、過払い金請求とは、貸金業者に対して支払っていたグレーゾーン金利の部分を返してもらう請求のことを指します。過払い金が発生する仕組みは、利息の上限を定める法律と関係しています。
1-2.利息の上限を定める法律
契約は当事者の間でどのように定めることもできるのが原則なので、利息も本来は当事者で定めることができます。
しかし、利息は貸金業者の利益になる部分なので、まったく無制限に自由にしておくと、借り入れをしなければならない人が生活に困るような高利になるおそれがあります。
そこで、法律で利息には上限が付されています。
利息の上限については、高利貸しの民事上の効力を規定する利息制限法と、高利貸しをする者に刑罰を定める出資法という、目的が異なる2つの法律があります。
1-3.グレーゾーン金利とは
この2つの法律における利息の上限は現在では20%となっています。
利息制限法は制定されたときから20%です。
しかし、出資法については、2010年6月1日に現在の利息になる前には、直前でも29.2%と、利息制限法よりも高い利息であった時期がありました。
貸金業者は、刑事罰に問われると営業ができなくなることから、出資法の上限利息は守りながらも、利息制限法については当事者が争わなければ問題とならないので、利息制限法は超えて貸付を行っていました。
この、利息制限法以上出資法未満の金利のことをグレーゾーン金利と呼んでいます。
1-4.グレーゾーン金利の貸付については最高裁が無効と判断した
グレーゾーン金利での貸付について争った一連の訴訟で、最高裁判所は次のような判断をして、現在に至ります。
● グレーゾーン金利での貸付は無効である。
● 元金がある場合には、無効となった金利部分を充当する。
● 完済している、あるいは元金よりも無効となる利息のほうが多い場合には契約者は返還を請求することができる。
これらの判例をもとに貸金業者に対してお金を返してもらうのが過払い金請求ということになります。
1-5.奨学金は利息制限法以上の貸し付けを行っていないため過払い金が発生しない
では、奨学金の場合はどうして過払い金が発生しないのでしょうか。
奨学金については、貸付時に利息制限法を超える利息で貸し付けを行いません。
そのため、利息制限法以上のグレーゾーン金利での貸付をしていないので、過払い金が発生しないのです。
2.奨学金の返済が難しい!この場合の対応方法にはどのようなものがあるか
過払い金がないのはわかったとして、現実に奨学金の返済が難しくなっているような場合には、どのような対策が必要でしょうか。
2-1.奨学金の特徴
まず、奨学金という債務についての特徴を確認しましょう。
奨学金の特徴は、親や親族などが保証人となっていることです。
消費者金融や銀行のカードローン、信販会社などの貸金業者から借り入れをする場合には、基本的には保証人(連帯保証人)はついていません。
そのため、奨学金の返済が遅れるようなことがあったり、債務整理をして奨学金が対象になる場合には、保証人に請求がされることになっていまいます。
2-2.他の借り入れに過払い金がある場合には
奨学金の借り入れの他に消費者金融や信販会社から借り入れがあるような場合で、過払い金が発生している可能性があるのであれば、これらの会社に対して過払い金請求を行って、取り戻したお金を奨学金の返済に充てても良いでしょう。
なお、銀行のカードローンについても利息制限法以上の貸し付けを行っていないので、過払い金発生しておりません。
2-3.過払い金請求が難しい場合には上手に債務整理をする必要がある
過払い金請求が難しい場合には、返済が難しいのであれば、早めに債務整理を行うことが望ましいです。
ただし、上述したとおり、奨学金について債務整理の対象とすると、連帯保証人に対する請求がされることになるので、上手に債務整理をする必要があります。
3.奨学金がある場合の債務整理
奨学金がある場合の債務整理について確認しましょう。
3-1.債務整理とは
債務整理とは、借金返済が厳しくなったときに、その人にあった手段を利用して返済を免除してもらったり、楽にしてもらう手続きのことをいいます。
その人の借金の額や収支の状態などの状態にあわせて、任意整理・自己破産・個人再生といった手続きを上手に使うことで、借金生活から立ち直ることが可能です。
3-2.任意整理とは
債務整理の一つである任意整理とは、借り入れをしている債権者と個別に話し合って返済を楽にしてもらう手続きのことをいいます。
後述する自己破産・個人再生は裁判所に申し立てをして、基本的にはすべての債権者が一括して手続きに参加することになります。
任意整理は個別に債権者と話し合いをするものなので、後述しますが、奨学金のように連帯保証人がついているものは外す、ということが可能です。
その意味で債務整理の方法の中でも一番柔軟な手続きなのです。
ただし、減額幅は債務整理の中でも一番少なく、少なくとも元金を分割払いする必要があるので、ある程度の収入があるような場合でしか使えません。
3-3.自己破産とは
自己破産は、債務整理の中でも借金が免除されるという特徴をもつもので、裁判所に申し立てをして行うものです。
基本的にはすべての債務について免責してもらうことができますので、一番早く借金から免れることができる手続きであるといえます。
ただし、すべての債権者を平等に扱うために、奨学金や住宅ローンについても債権者として取り扱う必要があり、連帯保証人への請求や住宅の競売などは避けられません。
また、職業制限や住居に関する制限など、手続上の負担も大きい手続きであるといえます。
奨学金がある場合には、手続に加える必要があるので連帯保証人への請求が避けられません。
3-4.個人再生とは
個人再生とは、民事再生法に基づいてする借金減額の手続きで、裁判所に申し立てて借金を減額してもらった上で分割して支払うようにしてもらえる手続きです。
任意整理をするにあたって、最低限支払う必要のある金額の工面が難しい場合には、基本的に自己破産を選択するのが通常です。
しかし、自宅が競売にかかるということと、一定の職業に制限があるというデメリットがあります。
個人再生は、住宅ローンを手続きから外すことが可能であるので、住宅を維持することができます。
また、自己破産ではないので職業制限がかかりません。
任意整理が難しいけども、自宅を維持したい、職業制限を回避したい場合に利用されます。
奨学金がある場合には、こちらも自己破産と同様に手続きに含める必要があるので、連帯保証人への請求は避けれられないといえます。
3-5.奨学金がある場合には任意整理を検討
上述したように奨学金を対象とする債務整理をすると、連帯保証人への請求は避けられません。
そのため、任意整理で奨学金以外の債務の支払いを楽にして、借金返済を継続するのが基本です。
ただし、返済のための支払いができないような場合には、自己破産・個人再生を検討せざるを得ません。
ですので、借金の額が大きくなって、任意整理が難しくなる前に債務整理をすることが肝心であるといえます。
4.まとめ
このページでは、奨学金の過払い金請求ができないことと、奨学金の支払いが難しい場合の対処法についてお伝えしてきました。
奨学金は利息制限法以上の貸し付けを行っていないので、過払い金は発生しません。
返済が厳しい場合には、連帯保証人への請求がされないように、早めに任意整理を行うために、弁護士に相談をしましょう。