なぜ奨学金には過払い金は発生しないのか?理由を徹底解説!

奨学金にはなぜ過払い金が発生しないのか?

現代の日本は新型コロナウイルスの感染拡大による経済環境のなかで、学生の方の生活はアルバイトなどによる収入が途絶え、苦しくなっている方も増えています。大学などからの支援がおこなわれたり、奨学金を利用する方も増えているようです。

 

同時に、学生時代に奨学金を借りていた方も、収入が減少して奨学金の返済が苦しくなっている方もいらっしゃるようです。そのような方の中には、よくテレビCMなどでやっている過払い金請求が奨学金でも利用することができ、返済しなくてすむ、返済額を減らすことができるのではないかと期待する方もいらっしゃるようです。

 

しかし、結論からいうと、基本的には奨学金には過払い金請求はできないため、それによって返済が免除されたりすることはありません。

ただ、奨学金については、コロナウィルスをきっかけとした失業、収入減少を要因として返済が困難な方には返還の猶予制度を設けているところもあります。

 

今回は、この奨学金の過払い金請求がなぜできないのかという理由について詳しくご説明します。

 

奨学金の種類

最近では奨学金も多様化してきており、いろいろなところから奨学金を借りることができるようになってきていますが、主には次のようなものがあります。

・日本学生支援機構(JASSO)

・各大学が提供している奨学金制度

・地方公共団体・奨学金事業団体の奨学金制度(病院などが看護士資格取得のため出すケースなど)

・東日本大震災の被災学生への奨学金制度

このように奨学金はいろいろありますが、例えば、JASSOの場合、第一奨学金は無利息、第二奨学金でも年率0.89%とかなり低利の金利になっています。そのほかの奨学金も一定期間の勤務が条件になることもありますが、通常の借入金に比べるとかなり低金利、奨学金によっては無利子のものもあります。

 

 

過払い金の発生はなぜ生じたのか

過払い金は、もともと旧貸金業法が1984年に成立してから生じたといえます。旧貸金業法成立の際に、利息制限法の規制金利よりも高い貸付金利を認めたことが発端になっているのです。

 

すなわち、当時成立した旧貸金業法では、貸付の際に融資を受ける方に利息制限法よりも金利が高く、大きな負担が生じることを説明することが義務付けられたのです。そして、本人が納得すれば利息制限法よりも高い貸金業法上限金利29.2%で融資することが認められました。

 

この利息制限法の金利(15~20%、借入金額により異なる)と、旧貸金業法上限金利29.2の差の部分はグレーゾーン金利と呼ばれていました。

 

貸金業者の団体と当時の監督省庁であった大蔵省は、この金利が高いことを契約書に記載することで、旧貸金業法が求める説明責任は果たせるとして、貸金業者の利息制限法を越える金利での融資が認めていたのです。その結果、後述する2006年の最高裁判所の判決までの期間においては、利息制限法の上限金利を超えた融資がおこなわれてきました。

 

貸金業法のグレーゾーン金利には返還義務が生じた

最高裁判所は、単に契約書に「金利が高いこと」を明記するだけでは、貸金業者はきちんと説明責任を果たしていないと断定し、さらには過去に遡って、利息制限法を越えて支払った利息部分は返還しないといけない義務を貸金業者に認めました。この判決こそが、われわれ消費者金融の利用者が、消費者金融業者に対し、過払い金返還請求を可能とした理由となります。

 

貸金業者の監督省庁は金融庁に移っていましたが、金融庁はこの最高裁判所の判断を追認する形で、同年10月に貸金業法の改正をおこない、利息制限法を超える金利での融資は認められなくなりました。

 

奨学金の過払い金が生じない根拠

このように、過払い金の返還請求は、2006年を境に大きく判断が方向転換されたのですが、奨学金については、基本的には貸金業法上の融資かどうかはもともと判断が分かれていました。

 

過払い金の発生根拠になるのは、貸金すなわち貸金業法の適用を受けた貸付金(なりわい、本業として貸付をする業者)に限られていたのです。銀行などは、カードローンなどを融資していますが、銀行の個人融資は、銀行法といったより厳しい法律により規制され、過払い金の対象にはならなかったからです。さらにいうと、もともと銀行は利息制限法の上限金利内での融資しかしていなかったため、グレーゾーン金利というものも存在しません。

 

その意味で奨学金の場合には、JASSOをはじめとした奨学金の貸し出し元は、貸金をなりわい、本業として貸し付けをする業者ではないという観点から、貸金業法の融資ではないと考えられています。奨学金は、日本学生支援機構(JASSO)などがおこなうものや大学などの教育機関が直接貸し付けたり、返済義務のない助成金にあたるものもあり、いろいろな解釈はあるにしても、貸金業法の規制範囲に入っていない場合がほとんどです。

 

また、グレーゾーン金利という高金利という観点においても、仮に奨学金で返済義務があるものであったとしても、無利子や低金利の奨学金が多く、利息が利息制限法を超えるケースはほとんどなかったといえます。

 

 

奨学金の過払い金概念が問題になった要因

我が国の進学率は1960-70年代の高度経済成長期以降、急激に高まり、奨学金を受ける学生もそれに伴って増えていきました。それでもバブル崩壊による不景気の到来までにおいての経済成長率が高い時代には、学生が社会に出てからの収入額、収入増加率も高かったため、返済は容易にできてきました。

 

しかし、バブル崩壊以降の経済成長率が低下するにつれて、奨学金利用者の収入に対する、奨学金返済ウエートは高まり、次第に奨学金の返済における延滞率が高くなっていったのです。奨学金の返済は、長期にわたる場合が多いため、失業や長期入院など何かあった事故があった場合にはすぐに延滞につながったのです。

 

今回、新型コロナウイルスの感染増加に伴う緊急事態宣言、経済停滞によって、収入が減少や職を失った方も多く、延滞はさらに増えていくと想定されます。

 

そのなかで、過払い金の概念が適用されるのではないか、何とか奨学金の返済額を減らすことができないかと考えられる方が増えてきたのだと思われます。

 

実際には奨学金の金利は低く、貸金業法の適用外のものも多い

最初に奨学金を紹介したなかでも明らかなように、奨学金の金利は極めて低く、利息制限法を超えるグレーゾーン金利の利息負担はなく、ほぼ過払い金は生じていません。

 

また、貸金業法の対象は融資をなりわい、本業としておこなっている業者に限られているため、その意味でも貸金業法の対象になる奨学金は少ないといえるのです。そのため、過払い金の対象となる奨学金はほぼないといえます。

 

 

まとめ

基本的に奨学金の負担金利は利息制限法の規制金利に比べて極めて低く、さらに貸金業法の対象となる貸付金にもならない場合もあるため、奨学金には過払い金請求の権利は生じないといえます。

 

奨学金の返済については、JASSCOをはじめとした、奨学金提供元はコロナウィルスをきっかけとする、返済猶予制度等を設けています。収入減少により奨学金返済が難しくなってきていると感じている方、すでに滞納をしてしまっている方は、まずは奨学金提供元に問い合わせを行い、利用できる返済猶予制度がないか確認することをお勧めいたします。